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   てさき
泳ぎ終え、陸へあがる時のような
背後で水面の崩れる音がした

風を受けた柳のように揺れる黒の骨格は扇にも似て薄い膜を貼り
それぞれは細く尖った端まで傷ひとつ無く磨かれた漆の細工
水に棲むものの推力を担う器官に似てなまめいてひるがえり
たしかに波打つ
雨の日の水の匂いを含んだ空気
地階に生まれた白いカビ
それらをかき分けて顔を見せ
現の波間へたゆたい出ては
長い手指でさし招く

 

 
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