Spicy Strawberry


 フライパンの中身を味見して少しコショウを足す。
 今夜は青椒肉絲がメイン。
 中華風のスープには絹さやとタケノコを入れた。

「もうできるから、服! なんか着て」

「あぁん? うるせぇな」

 ぺたぺたと足音がして、後ろから腰に手が回される。

「蘭丸、じゃま」

 言葉だけでは離れない相手はジーンズに、上半身はタオルをひっかけただけの姿だ。
 これから食事なんだから何か着て欲しい。

「しばらくぶりだろ、

 耳元で低く囁いたってだめだ。
 私にとっては一緒のご飯だって楽しみにしていた事なんだから。

「さめちゃうでしょ。離れてくれない?」

「あっためてやるよ」

 強引に顎を掴まれて唇を重ねられる。
 その深さに思考を停止してしまいそうになる。

「……ッ」

 突っぱねるように伸ばした左手は、しっとりとした肌に触れて勢いをなくす。
 だから、服を着ろって言ってるのに。

「肉の味がする」

「味見、したから」

 おいしそうでしょ? 先にご飯食べたいよね?
 スキを見てお皿を取ろうとした体を引き寄せられた。

「早く食いてぇ」

「いっぱいあるよ。ご飯、食べよ?」

 腰のあたりで手をウロつかせるのはやめて。
 いつも食べ物をちらつかせたらそっちを取るくせに。
 絶対、甘い顔なんて見せてやらないんだから。

「デザートは後で、ね。蘭丸」

「はぁ?」

 ぷっ、と蘭丸が吹き出した。

「自分で言うかぁ? デザートとか」

 ククッと笑い声を立てて体を離す。
 腹が立つ。
 そーゆー意味が無いことも無かっただけに顔が熱くなる。

「蘭丸の苺は無しっ! 私が1パック食べてやるッ」

 ついでとばかりに足を踏む。

「痛ッてぇ。、お前マジで踏んだだろ!」

 おかげで誘惑の腕は解かれる。

「顔、赤いぞ」

 ふいっと顔をそむけて背を向けた。
 すると、そっと肩に手が置かれ笑みを含んだ声が響いた。

「デザート、楽しみにしてるぜ」

 それだけ言うと、ぽんぽんっと肩を叩いて蘭丸はキッチンを出て行った。

 とりあえず、ご飯。
 それから……苺は、やっぱり二人分用意しよう。






 








◇2017.2.26








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