Shine Strawberry


 ソファまで苺を盛ったガラス器を運んでから、買っておいた物のことを思い出した。

「真斗は苺は何で食べる?」

「何で? フォーク、などではないのか?」

 心から不思議そうに聞き返されて、思わず笑ってしまった。

「あはは、そうじゃなくて、練乳とかミルクとか」

「あぁ、そういう意味か」

「使うかと思って一緒に買ったんだけど」

 練乳を受け取った真斗は、それをテーブルの上に置く。

「いや俺はこのままいただこう。
 は甘いのが好きなのか?」

「ううん。いつもこのまま食べてるよ」

 苺を口に運んで甘酸っぱさを堪能する。

「ん、おいしい!」

「そうだな。
 みずみずしく、甘く、飾り立てる必要など感じられん」

 2粒目を頬ばろうとして、注がれている視線に気づいて手を止めた。

「あの……なに?」

 見つめられながら、というのは何とも気恥ずかしい。
 真斗はバツの悪そうな表情を浮かべ、やや早口に答えた。

「いや、その、は幸せそうな顔で食べるものだと思っただけだ」

 ほのかに赤みを帯びた頬が目に入り、つられて顔が熱くなる。
 そんな自分をごまかしたくて、行き場を見失った果物で現状突破を試みた。

「わ、私も、真斗の幸せな顔が見たいかも! はい、あーん」

 直後、さしのべた右手は広い手の平へ包み込まれた。
 伝わる熱の高さに気を取られた隙に、しなやかな腕が肩を抱き寄せる。
 反射的に反らした体より、当然相手の背丈が上で、さらりと髪がこぼれかかった。
 間近で、互いの視線が絡みあう。

「ひとくち、味わわせてもらえるか?」

「……っそれ、は」

 正面切って問われては、断る理由など、あったとしても答えかねる。
 足踏みし、なんとも甘く小さくなってしまった声は、穏やかなキスに摘み取られた。








 








◇2017.4.7








夢小説 | リンク |  雑記 | 案内