Little Present


 セシルさんから渡された箱には
 見たこともないぐらい、きらびやかなネックレスが入っていた。

「こ、これは?」

 手に取ってみてもネックレスは豪華で、まるで美術品みたい。
 キラキラ光る金の飾りの間には、大粒のエメラルドがはめこまれている。
 もし本物なら、すごい値段がしそうだ。

「王家に伝わる品です。
 がこの前、つけてみたいと言っていたので取り寄せました」

 私、そんなこと言ったっけ。
 えーっと、でも、そういえばテレビでエジプト特集を見てた時
 重そうだけど、つけてみたい……なんて言ったかも。
 セシルさん、本気にしてくれたんだ。
 これ、かなりの貴重品なんじゃないのかな?
 私はおそるおそる聞いてみる。

「あの、本物、なんですか」

「それが……」

 セシルさんが辛そうに目をそらした。

「ごめんなさい。それは本物じゃない」

 よかった! 本物だったら緊張しちゃうところだった。
 やっぱりイミテーションだよね。
 ほっとしたのも束の間、セシルさんが真剣な目で私を見る。

「でも、同じデザインです。
 それとゴールドは、えーと、純金!
 ちゃんと作ってもらいました」

「作るって、私のために!?」

「はい! 本物とそっくりです」

 ただでさえ重みのあるアクセサリーが、ことさらずっしり感じられる。
 ど、どうしよう。純金って、この重さは本物の重さ?
 セシルさんは慣れていても庶民の私は足が震えそう。

、今はそれしかあげられないけど、愛しています」

 しか、って十分すごいです、セシルさん。
 うわぁ、こんなのもらっちゃっていいんだろうか。
 ここは言いにくくても、はっきり言わなきゃ!

「セシルさん」

「はい」

「これは、その、私には、もったいないです!」

「もったいない?」

「豪華すぎるというか、なんていうか」

 ただでもらうわけにはいかない。

「だいじょうぶ!
 つけてください。きっとに似合います」

 似合うかどうかを気にしてるんじゃないんですー!
 でも、優しい笑みをたたえたセシルさんに、ちょっと言い出せなかった。
 セシルさんは留め金をかけるのを手伝ってくれて、よく似合うって喜んでくれた。

 ああ、幸せ……だけど、ちょっと複雑。
 これからは、うっかりリクエストしちゃわないように気をつけよう。






 








◇2017.3.20








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