3.愛島セシルの焦燥


 神に祈り、歌い、踊りを捧げても叶わないことがある。
 人の心はなんてままならないものなのか……。

 ワタシにはわかる。
 愛しいの瞳には、いまだにワタシへの愛が見えません。

「大好きです」
「あなたと幸せになりたい」
「ずっといっしょにいてください」

 こんなにたくさん伝えても、いつもは穏やかに笑うだけ。
 他の人よりワタシのことを大切に想うようになってはくれません。

 ワタシは一体どうしたらいい?
 もっと日本語を勉強する?

「言葉だけじゃなく、行動も大事だよ」とレンが言っていました。
 でも、ナツキはいつもを抱きしめるけど、の心は動いていない。
 とてもホッとする。
 だけど同じくらい困ります。

 レッスン室に行く途中、ほかの人と話してみました。

「愛しているなら、相手の幸せを第一に考えるべきなのではないか?」

「マサトは好きな人が幸せなら、自分も幸せ?」

「ああ、もちろんだ」

 マサトの言いたいことはわかります。
 を悲しませたり苦しませることはしたくない。
 でも、ワタシと幸せになって欲しい。

「俺はマサみたいに考えられないよ。
 好きな子とは一緒にいたいし、そばで笑っていて欲しい」

「ワタシもそう思います!」

「しかし……」

 話しながらドアを開けたマサトが急に黙りました。
 あ、とトキヤがピアノのそばで話している。
 とても楽しそうです。

「いろいろな料理が出てきますね」

「はい! おいしそうで、本の中に食べにいってみたくなります」

「それは、あなたらしい」

 ワタシ達に気づいたがこちらに軽く頭をさげました。

「なんの話? 楽しそうだね」

「一十木くん、本の話をしていたんです」

 本?
 が一冊の本をカバンから取り出して、トキヤに渡しました。
 ああっ、そんな明るい笑顔をトキヤにだけ向けるなんて!!

「次の巻です。どうぞ」

「へえ〜、トキヤってそういうのも読むんだ」

「読みますよ。なにか?」

 トキヤの目が怖い。
 オトヤは「なんでも、ない」と言って回れ右をしました。
 あれ? さっきまで近くにいたマサトはいつの間にかストレッチを始めてます。
 その表情は暗い。
 声をかけにくいです。
 それは「相手の幸せを第一に」しているから?
 ワタシにはそうは思えません。

 すごく寂しい、くやしい気持ちです。
 でも、本を借りて読むのはとても難しい。
 日本語の漢字とタテ書き、読むのに時間がかかります。

 なにか、なにか他のことを考えないと!
 ワタシは決してあきらめません!






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◇2017.2.20








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