聖堂の中に
人影は無く
ただ、ほこりに林立する光の矢と
彼が
たたずんでいる
石畳の上の素足に近づく
私のたてた靴音は
ひどく荒々しくはねかえる
彼が問う
―――許さないのですか
それとも、と彼は晴れやかに
うたうように額をわずかに反らせる
―――愛するのですか
「私は唯ひとつの魂も
天のあなたの父さえも信じて仰ぐ者ではありません。
不毛の問いをなさっています。
貴き御名も聖誕祭も
資本主義と踊らせる者と
何ら変わるところはないのだと
そう思われるでしょう。」
答えた私に
彼は足の下にある石の一枚を
骨ばった指で示した
―――いいえ、
―――全てはこのように
―――明るみにあるのです
微笑みにはぬくもりがある
日が石を照らすように
―――罰されるためでなく
ぽたり、と
石に紅が散る
―――許されるために
その体から流される血潮の
音は静寂を破ることなく
―――罪は、この肩に
床を浸す
空気を震わせる
声は
耳元に
窓辺に
天の高みより響くように
届く
―――あなたを
―――愛し
彼は白い衣も
―――いつも
―――共に
光のように
―――あるのです
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