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31. ぬくもりをひとくち飲む カップの中に落ちた口紅が 薄い人魂の形で泳ぐ
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32. 薔薇の蕾がひらくとき そこへうずめた 私のあきらめも花になる
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33. 帽子をなおして ひとます戻る スティックのり
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34. 静かな入り江 空の白砂は うろこ雲
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35. くるくると 椿へ潜る 目白の背
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36. 光をはねかえし風を切る 雨粒のときは 空から落ちるのも楽しい
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37. かつて背負っていた重苦しさの 幾ばくかはセーヌにゆだね あなた 影の中から語りかける詩人
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38. いくら二粒あれば 小豆飯にも 眼爛爛
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39. 雪柳の枝々に 花咲くように 若葉ほころぶ
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40. 雨が椿の花落とす 紅色の花は顔をこちらへ向けたまま 頬から背から水のこぼれる
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