「自己信頼」
先日、家族で夕食をとっていた時のことです。母が加齢と共に世間の情報や、知識についていけなくなる、という話を始めました。そして、老齢に達したとき「ああ、自分は現代でなんて役に立たない人間なんだろう!」という絶望感に駆られないためには、一体どうしたら良いのかしらね?という、難しい問題提起をしたのです。
私や弟は、宗教や哲学に学んで自己肯定の気持ちを強く持ちつづければ良い。という案を出しました。しかし、母は「え〜・・・」と不満気でした。すると、そこで父が嬉しそうに自信を持って言ったのです。
「僕は知ってるよ。そんなの!死後百年残る論文を書くことだ!」
父(文系研究者)は「ねっ!」と笑顔で念を押すのですが、母は「何よそれ…ちっとも参考になりゃしないわ…。」と鬱陶しそうにします。弟も、「そんなことが出来る人は限られている。」と指摘します。
初めは誰も、父に回答を期待していたわけでは無かったはずです。それなのに、父以外の家族がみな言い知れぬ落胆を覚えた夜でした。
2004年8月29日