「連泊」
私は部屋でラヴェンダーを育てています。昼間は窓の外に出し夜は室内にしまっています。そうしないと鉢が邪魔で雨戸が閉められないからです。
そのラヴェンダーに数日前からカメムシがついています。茶色いつるつるの背中の天道虫くらいの大きさの、女性に人気が無い虫です。気がついたのはもう暗い時間で、指でつつくとこそこそ茎の裏側へ歩いていってしまったので、とりあえず部屋に入れておとなしく寝るものかどうか様子を見ることにしました。それから一週間近く、カメムシたちはずっとラヴェンダーにとまっています。私は軽い気持ちで泊めただけなのに、彼らはラヴェンダーが家だと思っているのかもしれません。ラヴェンダーはあまり食害にあわない植物のはず。でも、私は見慣れた存在のカメムシが何をどうやって食べているかもよく知らないのです。そこで、これ以上くわしくカメムシのことを書いてある本は無い、と言わんばかりの本を開いてみました。『図説カメムシの卵と幼虫 : 形態と生態』(小林尚, 立川周二著, 養賢堂, 2004.3, ISBN:4842503629)です。この本には詳細な図解で脚や口針の形態による種類の見分け方が述べられていました。カメムシの種類が多数あることと、餌が植物だけでなく栄養が足りない時には蚕も食べる例がある、ということ。また餌の植物に口針を刺して中身を吸うように食べることまで分かりました。ただ、研究者でない一般人が虫をひっくり返して前足の形態を調べるのは難しく、部屋に居るカメムシの正式名はわかりません。また、餌になる植物に卵を産む生態は蝶などと似ているようですが、ラヴェンダーを食べるかどうかははっきりせず、ここまで読み進んだ方の多くが気づかれているだろう通り、事の大小に関わらず何をするにも気負いすぎるせいで、焦点がずれたり事態の解決が遅れるのが
私の欠点です。
大切なことは、私が育てているのはラヴェンダーであってカメムシではない、ということですが、あいにく鉢を室内にしまう時間帯はすでに暗くなっている季節でもあり、毎日5匹前後のカメムシを取るより見てみぬ振りで連泊させておくほうがたやすいのです。なにより、何事にも気負いすぎるのがいけないと気づいたばかりなので、もし、カメムシが殖えはじめでもしたらまた考え直すことにします。
2006年10月22日(日)